研究中毒 ― 喜嶋先生の静かな世界

年明けなので、久々に読書感想文を書いてみる。
 

喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)

喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)

 
面白かった。森ミステリが好きな人は読んで損はないように思う。
 
内容としては「ある学生の大学から研究者になるまでの研究の話」だった。
まどろみ消去』の「キシマ先生の静かな生活」が元になっているようだ。
 
「純粋に研究するっつーのは楽しいもんですよ。研究者の考えっていいでしょー?」
というメッセージをミステリの中に入れるのは森博嗣さんのクセだ。
本書はこの点に焦点を当てて書かれている。
最後の章が来るまでは「あー、森博嗣さんのこの感じ。いいよね」的な感覚で読める。
大抵の理系の人なら「自分のそばにいる喜嶋先生」を想像して読んでいくのではないか。
 
この本がただの「研究自慢」に終わってないところは、やはり「研究者の危うさ」をテーマにしていることだろう。
「研究の弊害」についてきちんと書かれているのだ。この点は非常に斬新だ。
研究者の自殺に言及したり、研究中の集中状態を「トリップ」とドラッグ描写していたりする。
この辺りでなんとなく不穏な空気を感じながら読み進んでいくと、最後の章で読者をいきなり崖から突き落とす。
 
このブログの読者層に本書を強くオススメしたい。
読了後にはきっと何か考えさせられるはずだ。